Xのプロフィール欄を開くと、動画サイト、音楽配信、依頼の窓口、リンクまとめ……とURLが並んでいる。活動が広がるほど、初めて来た人は「結局どこで曲を聴けばいいのか」わからなくなります。
この記事では、SNSを中心に活動している楽曲制作者が、なるべく費用をかけずに公式サイトを持つための考え方と、使えるサービスの比較をまとめました。
公式サイトがあると何が変わるのか
SNSの投稿は流れていきます。新曲の告知も、1週間たてばタイムラインのはるか下です。公式サイトは、流れていかない「本拠地」になります。
- 初めて知った人が、作品をまとめて聴ける
- 依頼や共作の相談をしたい人が、実績と連絡先を確かめられる
- イベントの主催者やメディアが、紹介に使う情報を見つけられる
- SNSのアカウントに何かあっても、活動の記録が残る
見落とされがちなのが最後の点です。SNSのアカウントが凍結されたり、サービスの仕様が変わったりしても、自分のサイトがあればファンとの接点を失わずに済みます。
公式サイトに載せたいもの
最低限、次の5つがそろっていれば、公式サイトとして十分に機能します。
| 載せるもの | 役割 |
|---|---|
| プロフィール | どんな人が、どんな曲を作っているのかを伝える |
| 作品 | その場で聴いてもらう |
| お知らせ | 新曲の公開やイベントへの参加を伝える |
| 写真 | アーティスト写真やライブの様子で、人となりを伝える |
| 外部リンク・連絡先 | 動画サイト・配信サービス・SNS・依頼窓口への入口 |
なかでも大事なのは「作品をその場で聴ける」ことです。リンクを並べただけのページでは、曲を聴いてもらうまでにもう一度別のサイトへ移動してもらう必要があります。そのひと手間で離れてしまう人は少なくありません。
プロフィール文の書き方は、読まれるアーティストプロフィールの書き方で詳しく紹介しています。
サービス選びで見るべき5つのポイント
1. 無料でどこまでできるか
無料プランがあるサービスでも、サービスの広告やロゴが表示される、容量が小さい、公開できるページ数が限られる、といった制限があることがほとんどです。「無料で始めて、必要になったら有料にする」のか、「最初から有料で整える」のかを決めておくと選びやすくなります。
2. 独自ドメインが使えるか
「example.com」のような自分だけのURLを使うには、多くのサービスで有料プランが必要です。独自ドメインはサービスを乗り換えてもURLを変えずに済むのが利点ですが、ドメインの更新費用もかかります。活動を始めたばかりなら、まずはサービスのURLで始め、必要になってから独自ドメインを検討しても遅くありません。
3. 曲をその場で再生できるか
楽曲制作者にとって一番大事なポイントです。音声ファイルをそのまま置けるサービス、YouTubeやSoundCloudの埋め込みで対応するサービス、埋め込みに有料プランが必要なサービスなど、対応はさまざまです。
4. デザインにかけられる時間
自由にレイアウトを組めるサービスほど、見栄えの良いサイトにするには時間とセンスが必要です。テンプレートを選ぶだけで整うサービスは、自由度が低い代わりに、制作に集中する時間を確保できます。
5. 更新しやすさ
公式サイトは、作ったあとの更新が続くかどうかで価値が決まります。新曲を出すたびに、パソコンを開いてレイアウトを調整するのが負担なら、スマートフォンから更新できるか、作品を追加するだけで整うかを確かめましょう。
サービスの比較
楽曲制作者が公式サイトとして使えるサービスを、大きく4つのタイプに分けて比較します。料金は2026年9月時点で各公式サイトに掲載されている情報です。
タイプ1:ホームページ作成サービス
レイアウトを自由に組める、本格的なサイトを作るためのサービスです。
| サービス | 無料プラン | 有料プランの例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| STUDIO | あり(50ページ・5GBまで、STUDIOのロゴ表示、独自ドメイン不可) | Personal 月1,190円(年払い、税込) | 日本のサービス。デザインの自由度が高い |
| Wix | あり(Wixの広告表示あり) | 有料プランで独自ドメインや広告の非表示に対応 | テンプレートが豊富。世界的に利用者が多い |
| Jimdo | あり(広告表示あり) | 有料プランで独自ドメインに対応 | 操作がシンプル |
| ペライチ | お試し期間のみ | ライト 月1,628円(税込、3ページまで) | 1ページのサイトを作りやすい。すべての有料プランで独自ドメインが使える |
見た目にこだわりたい人、独自ドメインで本格的なサイトを持ちたい人に向いています。一方で、音源を再生できるようにするには、プレーヤーの埋め込みを自分で設定する必要があることが多く、デザインを整える時間もかかります。
タイプ2:ブログ・CMS
| サービス | 無料プラン | 有料プランの例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| WordPress.com | あり(広告表示あり、容量1GB、独自ドメイン不可) | パーソナル 月4ドル(年払い、税別) | ブログとして記事を積み重ねやすい |
| WordPress+レンタルサーバー | なし | サーバー代が月数百円〜 | 自由度が最も高い。サーバーの管理は自分で行う |
制作日記やレビューなど、文章での発信を続けたい人に向いています。自由度が高い反面、テーマ選びやプラグインの設定、セキュリティの更新など、運用の手間がかかります。
タイプ3:リンクまとめサービス
| サービス | 無料プラン | 有料プランの例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| lit.link | あり(基本機能は無料) | lit.link+ 月860円(税込) | 日本のサービス。スマートフォンだけで作成・編集できる |
| Linktree | あり(リンク数は無制限) | 有料プランで分析などの機能を追加 | 世界的に利用者が多い |
| Carrd | あり(ロゴ表示あり、独自ドメイン不可) | Pro Lite 年9ドル〜(独自ドメインはPro Standard 年19ドル〜) | 1ページのサイトを安く作れる。埋め込みは上位プランの機能 |
数分で作れて、プロフィール欄に貼るURLを1つにまとめるには最適です。ただ、基本はリンクを並べる場所なので、曲を聴いてもらう場所は別に用意することになります。
タイプ4:音楽向けのサービス
| サービス | 無料で使える範囲 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Bandcamp | 作品ページの公開 | デジタル販売の売上の15%(累計5,000ドルを超えると10%)、物販は10%。別に決済手数料 | 音源やグッズを直接販売できる。未購入の人は全曲を最低3回まで試聴できる |
| SoundCloud | アップロードは合計2時間まで | Artist 年39ドル、Artist Pro 年99ドル | 音源を置いて聴いてもらう場として定番。制作者どうしのつながりも生まれやすい |
| マイグル | すべての機能 | 無料 | 楽曲制作者のホームページ作成サービス。テーマを選んで作品を載せるとサイトになる。制作募集の掲示板もある |
作品を置くことが、そのままサイト作りになるタイプです。曲を聴いてもらうことを前提に作られているので、プレーヤーを用意する手間がありません。そのぶん、レイアウトの自由度はホームページ作成サービスほど高くありません。
目的別のおすすめ
| やりたいこと | 向いているタイプ |
|---|---|
| とにかく早く、プロフィール欄のURLを1つにしたい | リンクまとめサービス |
| 曲を聴いてもらうことを一番に考えたい | 音楽向けのサービス |
| 音源やグッズを販売したい | Bandcamp |
| 独自ドメインで、デザインにこだわったサイトを作りたい | ホームページ作成サービス |
| 文章での発信を続けたい | ブログ・CMS |
どれか1つに決める必要はありません。音楽向けのサービスで作品を聴けるページを作り、販売はBandcamp、プロフィール欄はリンクまとめ、というように組み合わせている人も多くいます。大事なのは、初めて来た人が迷わずに曲にたどり着けることです。
作ったあとにやること
- SNSのプロフィール欄のURLを差し替える
- 動画の概要欄やチャンネルの説明にもURLを載せる
- 新曲を出すたびに、作品とお知らせを追加する
- 半年に1回はプロフィールと代表曲を見直す
公式サイトは、作った瞬間より、更新を続けることで価値が上がっていきます。新曲のリリースに合わせた告知の流れは、自主制作の新曲リリースガイドで紹介しています。



