PCLとは何か

ボカロ曲を使った動画編集やイラスト投稿、コスプレなど、いわゆる二次創作は多くのボカロファンにとって身近な活動です。しかしMEIKO、KAITO、初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカといったクリプトン・フューチャー・メディア所有のキャラクターを扱う場合、著作権や商標の扱いについて何となく不安を感じながら投稿している人も少なくないはずです。

この不安を解消するために存在するのが「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」、通称PCLです。クリプトンが著作権法とは別に自主的に設定した利用許諾の枠組みで、法的な拘束力の根拠はあくまで正文にあり、要約ページはその内容をわかりやすく伝えるための位置づけになっています。正文は下記で確認できます。

PCLの対象となるキャラクターは、クリプトンが権利を持つ以下の6体に限られます。

  • MEIKO
  • KAITO
  • 初音ミク
  • 鏡音リン
  • 鏡音レン
  • 巡音ルカ

VOCALOID4 v flowerのように、クリプトン以外の企業が権利を持つキャラクターはPCLの対象外です。どの会社が権利者かによって適用されるルールが変わるため、複数のキャラクターが登場する作品を作る場合は、それぞれの権利者ごとにガイドラインを確認する必要があります。v flowerについては配布元であるINTERNET Co., Ltd.のサイトで利用規約が公開されているので、扱う際はそちらを直接確認してください。

キャラクター利用のガイドラインは折に触れて改定されており、新しいキャラクターの追加や仕様の更新があった際にはピアプロのサイト上で告知されます。継続的に二次創作を行う人は、下記のピアプロのお知らせページなどを定期的に確認する習慣を持っておくと安心です。

3段階に分かれる許諾の枠組み

PCLを理解するうえで最も重要なのは、利用の目的や規模によって手続きが3段階に分かれているという構造です。この段階を把握しておけば、自分がこれから行おうとしている活動にどのルールが適用されるのか判断しやすくなります。

第1段階 PCL(非営利・無償)

いちばんわかりやすいのは、この段階です。個人が非営利でSNSにイラストを投稿したり、無償で二次創作フィギュアを展示したり、コスプレを楽しんだりする分には、事前の申請は一切必要ありません。作品を公表した時点で、自動的にクリプトンとの間でPCLに基づく契約が成立するという仕組みになっています。

想定される利用例は次のようなものです。

  • SNSやブログへのイラスト投稿
  • 無償で行う同人イラスト集・フィギュアの展示や配布
  • コスプレでの撮影・イベント参加
  • 個人が趣味の範囲で作る楽曲のMV、歌ってみた・演奏してみた動画

これらはすべて申請不要で、公表した瞬間からPCLの適用対象になります。

第2段階 ピアプロリンク(非営利・有償)

次の段階は、非営利ではあるものの、何らかの形で対価を得る場合です。同人誌や同人CDを原材料費程度の価格で頒布する場合などがここに該当します。動画投稿サービスの収益化プログラムについても、対価を得る行為としてこの段階に含まれる可能性があるため、利用するプラットフォームの規約とあわせてピアプロリンクの申請要否を確認してください。

手続きはオンライン申請で完結し、規約に明らかに違反していない限り、原則として審査なしで受理される運用になっています。発行されると有効期間があり、期限が来る前に延長申請を行えば更新できる仕組みです。申請にかかる手数料の有無については、この記事では断定を避けます。実際に申請する際は、下記の申請ページで最新の条件を確認してください。

第3段階 個別契約(営利・法人)

最も上の段階は、法人としての利用や、個人であっても広告宣伝を目的とした利用、趣味や教育の範囲を明らかに超える大規模な利用です。この段階では、問い合わせフォームから事前に連絡し、個別に契約を結ぶ必要があります。「企業案件として使いたい」「グッズを大量生産して販売したい」といった話が出てきた時点で、この段階に踏み込んでいる可能性が高いと考えてよいでしょう。

3つの段階に共通して言えるのは、「非営利か営利か」「対価を得るかどうか」という2つの軸で自分の活動を整理すると、どの段階に当てはまるかが判断しやすくなるということです。制作を始める前に、完成後にその作品をどう発表し、どう頒布するつもりなのかをあらかじめ考えておくと、あとから手続きが必要だと気づいて慌てることを防げます。

やってはいけないこと

PCLおよびキャラクター利用のガイドラインでは、非営利であっても共通して禁止されている行為がいくつか定められています。詳細は正文を確認していただきたいですが、代表的なものは次のとおりです。

  • 宣伝・広告目的での二次創作物の使用
  • 他者の作品を自分のものとして盗用すること
  • キャラクターの価値を著しく損なう利用
  • 他者に不快感を与える、または傷つけることを目的とした利用
  • 公序良俗に反する利用
  • 公式製品との誤解を招く利用

これらは一見すると当たり前のことのように思えますが、実際の創作活動の中では線引きが曖昧になりがちな部分でもあります。

「公式製品との誤解を招く利用」は、パッケージデザインを模したグッズを作る場合や、公式コラボであるかのような紹介文を添えて作品を公開する場合に問題になり得ます。悪意がなくても、見る人に誤解を与えてしまう表現には注意が必要です。ロゴやパッケージの色使いをそのまま流用したグッズを作ってしまうと、購入者が公式グッズと誤認する余地が生まれるため、二次創作であることが一目でわかるデザインにしておくことが安全です。

「キャラクターの価値を著しく損なう利用」も判断が難しい項目です。過激な表現そのものが一律に禁止されているわけではありませんが、キャラクターのイメージを大きく傷つけるような扱いは、非営利であっても問題視される可能性があります。特に公開範囲が広いプラットフォームに投稿する場合は、想定していない層の目にも触れることを前提に、表現のトーンを一段落ち着かせておくと安心です。

「他者の作品を自分のものとして盗用すること」は二次創作特有の論点です。他の創作者が公開しているイラストや設定を無断で流用し、自分の作品として発表する行為は、PCLの禁止事項であると同時に、著作権法上も問題になり得ます。参考にした作品がある場合は、その旨を明記するか、そもそも参考元に許可を得ることが望ましいです。

こうした禁止事項は固定的なものではなく、二次創作をめぐる状況の変化に応じて、クリプトンから注意喚起が発信されることがあります。ガイドラインの内容そのものが変わったわけではなくても、既存のルールを超える利用が目立ってきた場合には、公式からのメッセージが出ることがあるため、定期的に公式サイトやピアプロのお知らせを確認しておく価値があります。

教育機関での利用について

営利を目的としない教育機関については、「授業の過程で必要な範囲」内であれば、個別契約を結ばずに利用できるとされています。学校の授業でボカロ曲や関連キャラクターを教材として扱う場面を想定した規定です。

ただし、この「授業の過程で必要な範囲」がどこまでを指すのか、例えば教材として配布した資料をどこまで再配布してよいのか、授業の様子を録画してオンラインで公開することが認められるのかといった具体的な線引きについては、正文だけから詳細を読み取ることは難しい部分です。学校関係者が実際にこの規定を利用する場合は、具体的な利用方法を明確にしたうえで、下記の問い合わせ窓口からクリプトンへの確認も検討するのが無難だと考えられます。

二次創作を続けていくために

ここまで見てきたように、PCLは「個人が非営利で楽しむ二次創作」を後押ししながら、「対価を得る場合」や「営利利用」については段階を分けて手続きを求めるという、比較的バランスの取れた設計になっています。多くのボカロファンにとっては、最初の「PCL」の段階だけを意識していれば十分なケースがほとんどでしょう。

一方で、活動が広がってくると、同人誌の頒布や動画の収益化といった形で「ピアプロリンク」の段階に自然と入っていくことも珍しくありません。そうなったタイミングで慌てないよう、自分がどの段階にいるのかを把握しておくことは、長く創作を続けていくうえでの土台になります。

また、複数のキャラクターや複数の権利者が関わる作品を作る場合は、それぞれのガイドラインの間で禁止事項の範囲や表現が微妙に異なることもあります。一つのキャラクターについて確認した内容をそのまま別のキャラクターにも当てはめず、必ず権利者ごとに正文を確認する習慣をつけておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。

こうした著作権や契約に関する情報は、一度理解しても時間が経つと忘れてしまいがちです。日々の制作と並行して、ライセンス周りの知識も少しずつ更新していく姿勢を持っておきたいところです。