ボカロPやDTMerの活動では、既存の曲をアレンジしたり、自分の曲を別の人にリミックスしてもらったりする場面が日常的にあります。このとき関わってくるのが「二次的著作物」という考え方です。言葉としては聞いたことがあっても、具体的にどういう権利関係が生まれるのかは、意外と整理されないまま活動している人も多いのではないでしょうか。

二次的著作物とはどういうものか

二次的著作物とは、既存の著作物(原著作物)をもとに、翻訳・編曲・変形・翻案などによって新たに創作された著作物のことを指すとされています。音楽の分野で言えば、原曲をアレンジしたカバー音源や、歌詞を書き換えた替え歌、原曲のメロディーを大胆に変奏したリミックスなどが、この二次的著作物にあたる可能性があります。

重要なのは、二次的著作物を作った人にも、その二次的著作物について独自の著作権が発生するとされている点です。つまり、原曲の著作者とは別に、アレンジをした人自身にも権利が生まれる、という二重構造になっています。

二次的著作物を利用するときは誰の許諾が必要か

ここでよく誤解されるのが、「アレンジした人の許諾さえ得れば、その二次的著作物を自由に使える」という考え方です。実際には、二次的著作物を利用しようとする場合、二次的著作物自体の著作者(アレンジをした人)と、原著作物の著作者(原曲を作った人)の、双方の許諾が必要になるとされています。

具体的な場面で考えてみます。

  1. 誰かが原曲Aをアレンジして、二次的著作物Bを作った
  2. 第三者が、このBをさらに動画で使いたいと考えた
  3. この場合、Bを作った人からの許諾だけでなく、原曲Aの著作者からの許諾も必要になる

アレンジやカバーを重ねていく創作文化の中では、権利関係が何層にも重なっていく可能性があります。「誰の許諾を取れば使えるのか」を突き詰めて考えると、実は関係者が想像以上に多いことに気づくケースは少なくありません。

自分がアレンジ側になったときに注意したいこと

自分が誰かの原曲をアレンジして二次的著作物を作った場合、その二次的著作物について自分が持つのは、あくまで自分が加えた改変の部分に関する権利です。原曲部分の権利についてまで、自分だけで許諾を出せるわけではありません。

たとえば、自分が原曲をアレンジしたカバー音源を、誰かに「使わせてほしい」と頼まれたとします。このとき、自分の判断だけで許諾を出してしまうと、原曲の著作者の権利を無視した形になってしまう可能性があります。二次創作が絡む場面では、誰が何について許諾を出せる立場にあるのかを、原曲の権利者とアレンジ者の両方について整理しておくことが欠かせません。

権利関係を整理すると、次のようになります。

立場 権利が及ぶ範囲
原著作物の著作者 原曲そのものに関する権利
二次的著作物の著作者(アレンジ者) 自分が加えた改変部分に関する権利
第三者が二次的著作物を利用する場合 原著作者・アレンジ者の双方の許諾が必要

ボカロ文化と二次的著作物の相性

ボーカロイド楽曲の文化は、もともと「本家」と呼ばれる原曲に対して、歌ってみた・演奏してみた・イラスト・アレンジなど、多様な二次創作が重なっていく形で発展してきた側面があります。この構造自体は文化としての豊かさを生んでいますが、権利関係の観点で見ると、二次創作が重なるほど関係者が増え、整理が複雑になっていくという側面も持っています。

自分の楽曲が多くの二次創作を生んだ場合、自分(原著作者)の許諾に加えて、間に入ったアレンジ者の許諾も必要になる場面が出てくる可能性があります。逆に、自分がアレンジ側として参加する場合も、自分の改変部分についてどこまで権利を主張できるのか、原曲の著作者とどう関係するのかを、あらかじめ意識しておくとよいでしょう。

共同制作で気をつけたいクレジットと権利の整理

複数人で一つの二次的著作物を作る場合(たとえば、アレンジャーと編曲協力者が別にいる場合など)は、誰がどの部分を担当したのか、権利関係をどう扱うのかを、制作の早い段階で話し合っておくことをおすすめします。

  • 誰が原曲のアレンジを担当したのか
  • 追加でパートを作った人がいる場合、その人の権利はどう扱うのか
  • 完成した二次的著作物を、誰の名前で、どのように公開するのか
  • 第三者から利用の申し出があった場合、誰が窓口になって許諾を判断するのか

これらを口頭の約束だけで済ませてしまうと、あとになって「言った・言わない」のトラブルに発展しやすくなります。簡単なメモ書きやメッセージのやり取りでもよいので、合意した内容を形に残しておく習慣を持つと安心です。

判断に迷ったら専門家や管理団体に相談する

二次的著作物をめぐる権利関係は、関わる人数が増えるほど複雑になります。原曲の著作権が著作権等管理事業者に管理されている場合は、その管理事業者の公式な案内を確認することが第一歩になります。個別の契約関係や、複雑な共同制作のケースについては、著作権に詳しい専門家に相談する選択肢も持っておくとよいでしょう。

二次的著作物という考え方を理解しておくと、自分が原曲を扱う立場になったときも、誰かにアレンジしてもらう立場になったときも、権利関係を感覚ではなく根拠を持って整理できるようになります。創作を重ねる文化を楽しみながら、トラブルを避けるための土台として、この基本を押さえておくことをおすすめします。