JASRAC・NexToneでの許諾状況の確認方法
歌ってみた動画やカバー曲を投稿する前に、まず確認しておきたいのが著作権、つまり作詞・作曲の管理状況です。JASRACが管理している楽曲かどうかは、JASRACが公開している作品データベース検索サービス「J-WID」で調べられます。
J-WIDでの確認手順は次の通りです。
- J-WIDのトップページにアクセスし、利用上の注意を読んで「了承」を選択する
- 曲名やアーティスト名などで検索する
- 該当する楽曲を開き、「管理状況」の欄を確認する
ここで見るべきポイントは、「配信」欄が「○」になっているかどうかです。あわせて「所属団体」が「JASRAC」または「PD(パブリックドメイン)」であることも確認してください。この二つが揃っていれば、著作権の観点では投稿してよい状態にあると判断できます。
検索や管理状況の見方に慣れていない場合は、JASRACが用意している「インターネット お手続き診断」も参考になります。選択式の質問に答えていくことで、個別の手続きが必要かどうかを診断してくれるツールです。
なお、J-WIDで検索しても該当楽曲が見つからない、あるいは「所属団体」がJASRAC以外になっているケースもあります。日本にはJASRACのほかにNexToneというもう一つの著作権等管理事業者が存在するためです。この場合はNexToneの「作品検索データベース」でも同様に「配信」欄の○×を確認できます。一つのデータベースで見つからないからといって「権利者不明・利用不可」と即断せず、両方の管理事業者を確認するのが基本の流れになります。
正直に書いておきたいことがあります。J-WIDの「配信」欄の○×判定が、歌詞やメロディの視覚的な利用(楽譜化や伴奏音源制作など)と、実演の録音を伴う利用(歌ってみた投稿など)とで、細目までまったく同じ基準で表示されているかどうかは、公開されている説明ページの情報だけでは断定できません。判定の大枠、つまり○であれば配信目的の利用が許諾範囲に含まれるという点は確認できますが、迷う場合はJASRACへの問い合わせも選択肢に入れておくとよいでしょう。
動画・配信サービスごとに確認すべきこと
JASRACは、動画投稿・共有サービスを運営する事業者と個別に「利用許諾契約」を結んでいます。この契約を結んでいるサービスであれば、投稿者、つまり歌い手やDTMerの皆さんは個別の許諾手続きをすることなく、許諾範囲内でJASRAC管理楽曲を使った動画を投稿できます。逆に言えば、契約を結んでいないサービスに投稿する場合は、投稿者自身が個別に手続きを検討する必要が出てきます。
JASRACは「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」を公式サイトで公開しています。この一覧は随時更新されるため、掲載されているサービス数や各サービスの契約状況は、投稿前に必ず自分の目で最新の一覧を確認することをおすすめします。ここで具体的な日付やサービス名を古い記憶のまま信じてしまうと、実際の契約状況とずれてしまうリスクがあります。
確認の仕方としては、次のような手順が実務的です。
- JASRAC公式サイトで「UGCサービス」または「利用許諾契約」のページを検索する
- 一覧の中に、自分が投稿しようとしているサービス名があるかを探す
- 名前が見つかった場合も、契約の範囲(音楽利用全般なのか、特定の利用形態に限られるのか)まで一覧の注記を読む
- 名前が見つからない場合は、そのサービスに個別の権利処理ルールがないか、サービス側の利用規約やヘルプページもあわせて確認する
主要な動画投稿・配信サービスの多くはJASRACと何らかの形で契約を結んでいるとされていますが、契約の有無やその内容は事業者ごとに異なり、また時期によって変わる可能性もあります。「有名なサービスだから契約しているはず」といった思い込みで進めず、投稿の都度、公式一覧で確認する習慣をつけておくと安心です。
特に注意したいのが、一覧に名前が見当たらないサービスに投稿する場合です。名前が見当たらないからといって、必ずしも利用不可と決まるわけではありません。ただし、その場合は投稿者側で追加の確認や手続きが必要になる可能性があるため、「契約済みサービスの一覧に載っているかどうか」を出発点として、載っていない場合はサービス側の案内やJASRACへの問い合わせも含めて個別に調べる、という進め方が安全です。SNSや動画サービスの中には、音楽利用に関する扱いが変わりやすいものもあるため、以前に確認した情報をそのまま信じず、投稿の直前に再確認する姿勢が大切です。
見落としがちな原盤権・著作隣接権の問題
歌ってみた・カバー曲の投稿で語られるのは著作権、つまり作詞・作曲家の権利の話が中心になりがちですが、実はもう一つ、別の権利が関わってきます。それが著作隣接権、特に「原盤権」と呼ばれるものです。
JASRACが結んでいる包括的利用許諾契約は、あくまで著作権、つまり作詞・作曲をカバーするものです。市販のCDや配信サービスで購入した音源、つまり「原盤」そのものを伴奏として流用する場合は、この契約の対象外になります。JASRAC自身も、インターネット上での音楽利用について、著作権とは別に著作隣接権、つまり音源製作者やアーティストの権利の許諾を得る必要があると案内しています。
これは実務上、次のような違いとして現れます。
- 自分でピアノ伴奏を弾いて録音した音源:著作権の処理(JASRAC/NexToneの確認)だけで足りる
- 市販カラオケ音源や配信音源をそのまま伴奏に使う:著作権に加えて、原盤権者(レコード会社など)への個別の確認が必要になりうる
- 作曲者・編曲者が二次利用を許可して配布している音源:配布条件に沿っていれば、著作権・原盤権とも比較的処理しやすい
多くの歌い手が「歌ってみた用のオフボーカル音源」や、配布されているインストゥルメンタルを使う理由も、ここにあります。作曲者・編曲者があらかじめ二次利用を許可する形で音源を配布しているケースであれば、原盤権の扱いについても投稿者側が個別に交渉する手間を減らせます。逆に、市販音源のオフボーカルトラックを勝手に抽出して使うような行為は、著作権をクリアしていても原盤権の観点で問題になり得るので注意が必要です。
原盤権者への確認方法について迷った場合は、JASRACのサイトにも問い合わせ先の案内があるので、そこから辿ってみるとよいでしょう。また、配布音源を使う場合は、配布元が明示している利用条件(クレジット表記の要否、商用利用の可否、投稿先の制限など)を必ず読んでから使うことが基本になります。条件を読まずに使ってしまい、後から配布元とトラブルになるケースは決して珍しくありません。
投稿前のチェックの流れをまとめる
ここまでの内容を、実際に動画を投稿する前のチェックの流れとして整理すると、次のようになります。
- J-WIDで楽曲を検索し、「配信」欄が○かどうか、「所属団体」がJASRACかPDかを確認する
- JASRACで見つからない場合は、NexToneの作品検索データベースでも確認する
- 投稿先のサービスが、JASRACの利用許諾契約締結サービス一覧に載っているかを、最新の情報で確認する
- 伴奏に市販音源や配布音源を使う場合、その音源の利用条件(原盤権の扱い)を確認する
- 判断に迷う場合は、JASRACの「インターネット お手続き診断」を使うか、直接問い合わせる
こう並べてみると手順が多く感じるかもしれませんが、実際にかかる時間はそれほど長くありません。多くの場合、J-WIDでの検索と投稿先の確認だけで判断がつきます。むしろ時間がかかるのは、伴奏に使う音源の権利関係を自分自身で把握しきれていないケースです。自作の伴奏なのか、誰かが配布している音源なのか、市販音源からの抽出なのか、この点だけは投稿前に自分の中で整理しておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。
権利関係の確認は、一度やって終わりではありません。同じ楽曲でも、投稿先のサービスが増えたり、使う音源を変えたりするたびに、あらためて確認し直す必要が出てきます。特に複数の楽曲を並行して制作・投稿している場合は、どの楽曲でどの音源を使い、誰にどんな条件で許可を得たのかが記憶だけでは曖昧になりがちです。マイグル2のようなサービスで楽曲制作のやり取りを記録として残しておくと、後から「この伴奏は誰が作ったもので、どんな条件で使わせてもらったか」を振り返る手間が減り、権利関係の確認そのものにも取り組みやすくなります。



