曲は作れるけれど、歌ってくれる人がいない。MVを作りたいけれど、絵が描けない。ひとりで制作していると、どこかで誰かの力を借りたくなります。

この記事では、一緒に曲を作る相手の探し方を、使えるサービスの比較、募集文の書き方、依頼するときに取り決めておくことの順に紹介します。

まず決めること:どんな関係を求めているか

探し始める前に、相手とどんな関係になりたいのかをはっきりさせます。ここによって、向いている探し方がまったく変わります。

関係 例 向いている探し方
継続して活動するメンバー ユニットのボーカル、バンドのドラム メンバー募集サイト、制作募集の掲示板、コミュニティ
1曲単位の共作 ボカロ曲の歌ってみた、合作 SNSの募集タグ、制作募集の掲示板
有償の依頼 MIX、MVのイラスト、動画制作 スキルマーケット、依頼を受け付けている人への直接の連絡

「まずは1曲やってみて、合えば継続」という形もよくあります。その場合も、最初からそう伝えておけば、相手は判断しやすくなります。

探し方と使えるサービスの比較

SNSの募集タグ

Xでは「#歌い手募集」「#MIX依頼」「#絵師募集」「#ボカロP募集」などのタグで募集や依頼の受付がやり取りされています。

  • 良いところ:多くの人の目に触れる。費用がかからない。相手の普段の投稿から人柄がわかる
  • 気をつけたいところ:投稿はすぐに流れていく。仲介する仕組みがないため、未払いや未納品などのトラブルは当事者どうしで解決するしかない

スキルマーケット

報酬を払って依頼するなら、仲介の仕組みがあるスキルマーケットが安心です。多くのサービスでは、依頼者が支払った代金をいったんサービスが預かり、納品が終わってから受注者に支払われる仕組みになっています。

サービス 向いている依頼 手数料の仕組み
ココナラ MIX、作詞・作曲、イラスト、動画など幅広い 主に受注者(出品者)の販売額から差し引かれる
SKIMA イラストが中心 受注者の販売額から11〜22%(金額に応じて変わる)。依頼者は基本的に手数料なし
Skeb イラスト・ボイスなどのリクエスト 打ち合わせなしでリクエストを送る形式。依頼できる内容や使える範囲は規約で確認が必要
pixivリクエスト イラスト・マンガ・小説 依頼者側に手数料。音楽は対象外
VGen 配信者・VTuber向けのイラストなど、海外のクリエイターも多い 受注者側に5%のサービス手数料と決済手数料

サービスによって、商用で使えるかどうか、打ち合わせやリテイクができるかどうかが違います。MVやジャケットなど作品として公開するものを頼むときは、依頼する前に、そのサービスで商用利用や作品への使用が認められているかを必ず確かめましょう。

歌やセッションのアプリ

nanaは、スマートフォンで歌や楽器を録音して投稿できる無料のアプリです。ほかの人の伴奏に歌を重ねたり、ハモりや楽器を足したりしてコラボできます。いきなり正式に依頼するのではなく、まず気軽に声や演奏を合わせてみたいときに向いています。

メンバー募集サイト

バンドメンバーを探すなら、OURSOUNDSのようなメンバー募集サイトがあります。基本は無料で使え、地域やパート、ジャンルで募集を探せます。スタジオで一緒に音を出す、対面での活動を前提にしたメンバー探しに向いています。

コミュニティ

Discordなどの制作者コミュニティでは、同じジャンルの人と日常的にやり取りできます。いきなり募集を出すより、普段から交流しておくことで、「この人となら一緒にやれそう」という相手が自然と見つかることもあります。

制作募集の掲示板

募集が一覧になっている掲示板は、SNSのように投稿が流れていかず、あとから来た人にも見つけてもらえるのが利点です。楽曲制作者のためのサービス「マイグル」にも制作募集の掲示板があり、ボーカル・作詞・作曲・編曲・ミックス・イラスト・MVのタグで募集を出したり探したりできます。

SNSと掲示板を組み合わせるのもおすすめです。掲示板に募集を立て、そのリンクをSNSで共有すれば、たくさんの人に届けつつ、募集の内容はいつでも読める場所に残せます。

応募が集まる募集文の書き方

応募する側は、募集文だけを見て「自分に合うか」「信頼できる相手か」を判断します。次の項目がそろっていると、安心して応募できます。

  • 募集するパートと人数
  • 活動の形:継続か1曲だけか
  • 活動内容とペース:オンラインか対面か、打ち合わせの頻度
  • 求める人:経験や条件。なければ「どなたでも」と書く
  • 報酬とクレジット:有償か無償か、クレジットの表記
  • スケジュール:締め切りや公開の予定
  • 自分の作品:どんな曲を作っているのかがわかるリンク

最後の「自分の作品」が一番大事です。応募する側も、相手の作品を聴いてから決めたいと考えています。作品を1か所にまとめた公式サイトがあれば、リンク1本で伝えられます。

メンバー募集のテンプレート

【】の中を書き換えて使ってください。

【募集パート】 ボーカル1名 【活動内容】 オリジナル曲の制作と、月1回の配信ライブ 【活動ペース】 月2〜3回のオンライン打ち合わせ 【求める人・条件】 歌うことが好きな方ならどなたでも 【その他】 これまでの作品は公式サイトで聴けます。気軽にご連絡ください。

共作・依頼のテンプレート

【募集パート】 ミックス 【作品の内容】 ボカロ曲1曲(4分程度)。ジャンルはエレクトロポップ 【スケジュール】 来月末までに完成、再来月に動画サイトで公開予定 【報酬】 〇〇円(相談可) 【クレジット】 動画の概要欄と配信のクレジットに表記します 【その他】 デモ音源をお送りできます。

依頼する前に取り決めておくこと

一緒に作った作品は、あとから「そんなつもりではなかった」とならないよう、最初に条件をそろえておくことが大切です。親しい相手ほど、口約束で進めてしまいがちなので気をつけましょう。

報酬と支払い

金額、支払いの時期と方法、修正を何回まで受け付けるかを決めます。途中で企画がなくなった場合にどうするかも決めておくと安心です。

クレジット表記

誰の名前を、どこに、どう表記するのかを決めます。動画の概要欄、配信サービスのクレジット、ジャケットなど、表記する場所ごとに確認しておきましょう。

作品の権利と使える範囲

作った曲やイラストの著作権を誰が持つのか、依頼した側がどこまで使えるのか(動画、配信、グッズ、ライブなど)を決めます。

著作権のなかでも、公表権・氏名表示権・同一性保持権などの「著作者人格権」は、作った本人だけが持つ権利で、ほかの人に譲り渡すことはできません。そのため、イラストを動画に合わせて加工するなど、作品に手を加える可能性がある場合は、その点も事前に合意しておく必要があります。

文化庁は、専門家でない人どうしでも著作権の契約書を作れる「著作権契約書作成支援システム」を公開しています。質問に答えていくと、楽曲やイラストなどの契約書のひな形を作れるので、有償の依頼では活用を検討してみてください。

JASRACなどに登録する場合

曲をJASRACなどの著作権管理事業者に登録する場合、作詞者・作曲者が誰なのか、共作者どうしで取り分をどう分けるのかを決めておく必要があります。共作する時点で話し合っておくと、あとで慌てずに済みます。

フリーランスへの依頼

2024年11月から、フリーランスとの取引に関する法律(フリーランス法)が施行されています。依頼する側が事業者の場合、取引の条件を書面やメールなどで示すことが求められます。個人どうしの依頼でも、条件をメッセージなどで文字に残しておくと、行き違いを防げます。

応募が来たら

  • 相手の作品を必ず聴く、見る
  • 報酬・クレジット・締め切り・権利の範囲を、最初に文字で確かめる
  • いきなり大きな約束をせず、1曲や短いデモから始める
  • 断るときも、早めに丁寧に返事をする

共作は、一緒に作ること自体が楽しいのはもちろん、お互いのファンに作品が届くきっかけにもなります。条件をきちんとそろえて、気持ちよく作品づくりを進めましょう。

参考にした公式情報