時間をかけて作った新曲も、公開した日に「今日出しました」と投稿するだけでは、タイムラインに流れて終わってしまいがちです。聴いてもらえる人を増やすには、どこで公開するかを決め、公開の前後を含めた流れで告知を組み立てる必要があります。

この記事では、個人で活動する楽曲制作者が新曲を出すときに、配信の方法を選び、告知のスケジュールを立てるまでを順番に解説します。

まず決めること:どこで聴いてもらうか

新曲を公開する場所は、大きく3つに分けられます。

公開する場所 例 特徴
音楽ストリーミング・ダウンロード配信 Spotify、Apple Music、LINE MUSICなど 再生数やダウンロードに応じて収益が入る。個人は配信代行サービスを通して配信する
動画サイト YouTube、ニコニコ動画 MVやイラストと一緒に公開できる。コメントで反応がわかりやすい
音楽投稿サイト SoundCloud、piaproなど 手軽に公開でき、制作者どうしのつながりも生まれやすい

どれか1つに絞る必要はありません。ボカロ曲なら、動画サイトでMVを公開しつつ、同じ日にストリーミングでも配信する形がよく見られます。大事なのは、「メインで聴いてほしい場所」を1つ決めておくことです。告知のときに案内する先がはっきりします。

配信代行サービスの比較

SpotifyやApple Musicなどで配信するには、個人の場合、配信代行(ディストリビューター)と呼ばれるサービスを使います。曲とジャケットを登録すると、各ストアへまとめて届けてくれます。

主なサービスの料金と還元率を、各公式サイトの掲載内容をもとにまとめました。

サービス 料金の仕組み 収益の還元率 特徴
TuneCore Japan 年額制(Unlimitedプラン:年4,400円〜)、またはリリースごとの年額(シングル年1,551円、アルバム年5,225円) ストアの手数料を除いた100%(一部サービスを除く) 最短2日で配信開始。Spotifyの事前保存など予約系の機能やリンクページ(LinkCore)がある
DistroKid 年額制(Musicianプラン:年24.99ドル〜) 100% 年額で曲数無制限。リリースごとに事前保存に対応したリンクページ(HyperFollow)が自動で作られる
narasu 月額110円(1年契約)、または買い切り(シングル2,860円、アルバム5,500円) 90% 承認後、最短2日で配信開始
Eggs Pass 登録料・更新料ともに0円 受領額の80% 初期費用をかけずに始められる

このほかにも、無料プランと有料プランで還元率が変わるBIG UP!や、登録無料のFrekulなどがあります。料金体系は変わることがあるので、申し込む前に必ず公式サイトで確かめてください。

選び方の考え方

配信代行選びは、「先にお金を払って還元率を上げるか」「初期費用を抑えて還元率を下げるか」の選択です。

  • たくさん曲を出す予定がある:年額制で曲数無制限のプランは、曲を出すほど1曲あたりの費用が下がります
  • まずは1曲だけ試したい:初期費用が0円のサービスや、1曲ごとの料金のサービスが気軽です
  • 再生数がある程度見込める:還元率の差が収益の差に直結するので、100%に近いサービスが有利です
  • 事前保存や予約をしっかり使いたい:リリース前の告知に使える機能があるかどうかを確かめましょう

料金の安さだけでなく、年額の支払いをやめたときに配信がどうなるのかも、あらかじめ確かめておくと安心です。

リリース日の決め方

配信代行の準備期間を見込む

配信代行を通す場合、申し込んでからストアに並ぶまでに審査などの時間がかかります。公式に「最短2日」とうたっているサービスもありますが、事前保存を集めたり、ストアのプレイリストに向けて準備したりするなら、リリース日の数週間前には申し込みを済ませておくのが安心です。

イベントや季節に合わせる

ボカロ曲なら、ニコニコ動画で開催される投稿イベント「The VOCALOID Collection(ボカコレ)」に合わせる方法があります。例年2月と8月ごろに開催されていて、期間中はランキングや特集で新しい曲が見つけられやすくなります。

季節をテーマにした曲なら、その季節の少し前に出すと、聴く人の気分とタイミングが合います。

曜日と時間を決める

平日の夜や週末など、自分のフォロワーがよく見ている時間帯に合わせます。SNSの分析機能で、反応が多い時間帯を確かめておくと決めやすくなります。

告知のスケジュール

告知は、同じ内容を何度も繰り返すのではなく、段階ごとに伝える内容を変えるのがコツです。それぞれの投稿が新しい話題になり、宣伝ばかりという印象を与えずに済みます。

時期 やること 伝える内容
4週間前 配信代行への申し込み、ジャケットの完成 ―
2週間前 最初の告知 新曲を出すこと、タイトル、公開日、ジャケット
1週間前 試聴の公開 サビなど短い試聴、事前保存・プレミア公開の案内
前日 リマインド 公開の時刻
公開日 公開の告知 聴ける場所へのリンク1本
3日後〜1週間後 2回目の告知 感想の紹介、制作の裏話、歌詞に込めた思い

公開前:期待を作る

ジャケットは早めに用意する

ジャケットは告知の顔です。SNSにリンクを貼ったときに大きく表示されるので、最初の告知までに完成させておきましょう。タイトルと活動名がジャケットに入っていると、画像だけで何の告知なのか伝わります。

試聴で「どんな曲か」を伝える

15〜30秒ほどのサビの試聴があると、どんな曲なのかが伝わり、期待がふくらみます。歌詞の一部を画像にして添えるのも効果的です。

事前保存と予約公開を使う

リリース前から聴く約束をしてもらえる仕組みを使うと、公開日に確実に届けられます。

  • ストリーミングの事前保存:TuneCore JapanはSpotifyの事前保存(Pre-Save)やApple Musicの事前追加(Pre-Add)に対応しています。DistroKidでは、リリースごとに自動で作られるHyperFollowのページから事前保存を集められます
  • YouTubeのプレミア公開:公開日時を予約すると、視聴ページで公開までのカウントダウンが表示され、視聴者はリマインダーを設定できます。公開の瞬間をリスナーと一緒に迎えられるのが魅力です
  • ニコニコ動画のタイマー公開:公開日時を予約して投稿できます。予約中の動画も、公開予定のURLをXで共有できます

公開日:押す場所を1つにする

公開日の投稿で大事なのは、押してもらう場所を1つにすることです。Spotify、Apple Music、YouTube、ニコニコ動画のリンクを全部並べると、どれを押せばいいのか迷わせてしまいます。

選択肢は2つあります。

  • スマートリンクを使う:TuneCore JapanのLinkCoreやDistroKidのHyperFollowのように、1つのURLから聴く人が好きな配信サービスを選べるページを使う
  • 公式サイトに誘導する:作品のページで曲を聴けるようにしておき、各配信サービスへのリンクもそこにまとめる

動画サイトをメインにしているなら動画のURL、配信をメインにしているならスマートリンク、というように、最初に決めた「メインで聴いてほしい場所」に合わせて選びましょう。

公開後:もう一度届ける

公開日に見逃した人は必ずいます。数日後にもう一度、違う切り口で届けましょう。

  • もらった感想を紹介する(引用するときは相手の了承を得る)
  • 歌詞に込めた思いや、制作で苦労したところを話す
  • MVのイラストを描いてくれた人、歌ってくれた人など、協力者を紹介する
  • 次の予定を伝える

協力者を紹介すると、その人のファンにも曲が届きます。共作は、それだけで告知の幅を広げてくれます。

新曲の「帰ってくる場所」を作っておく

告知のたびに、SNSの投稿は流れていきます。新曲を聴いてくれた人が、あとから過去の曲やプロフィールをたどれる場所があると、1曲のリリースが次のファンにつながります。

公式サイトに作品一覧とお知らせをまとめておけば、リリースのたびにそこを更新するだけで、活動の記録が積み重なっていきます。楽曲制作者向けのサービス「マイグル」なら、作品やお知らせに公開日時を設定して予約できるので、リリース当日の朝に慌てて更新する必要もありません。

公式サイトの作り方や、使えるサービスの比較はアーティストの公式サイトを無料で作る方法で紹介しています。

参考にした公式情報