ラウドネスノーマライゼーションとは何か

ラウドネスノーマライゼーションとは、複数の楽曲を再生した際に、体感的な音量差ができるだけ小さくなるよう、各サービス側で自動的に音量を調整する仕組みのことです。多くの主要なストリーミングサービスが、何らかの形でこの仕組みを採用していると言われています。

この仕組みが導入される以前は、音源そのものの音圧(波形の振幅の大きさ)を上げることで、再生時に他の曲より大きく、力強く聴こえるようにする「音圧競争」が長らく続いていました。ラウドネスノーマライゼーションが働く環境では、音源の音圧を極端に上げても、再生時にはサービス側で音量が引き下げられるため、以前ほど音圧を上げる意味合いが薄れてきていると考えられています。

ラウドネスとは何を測っているのか

ラウドネスは、単純な波形の振幅(ピークレベル)とは異なり、人間の耳が実際に感じる音量感に近い指標だとされています。国際的な規格として、LUFS(Loudness Units Full Scale)という単位が広く使われています。

ピークレベルは一瞬の音の大きさしか測れないのに対し、LUFSは一定時間の音量の積分値に近い考え方で算出されるため、曲全体を通した体感音量をより正確に表せるとされています。マスタリングの現場では、このLUFS値を基準に、各配信先が推奨する値に近づける調整が行われることが一般的になってきています。

音圧を上げすぎることのデメリット

音圧を極端に上げるマスタリングでは、リミッターと呼ばれるエフェクトで波形の最大値を強く抑え込み、全体の音量を底上げします。この処理を強くかけすぎると、音の強弱(ダイナミクス)が失われ、静かな部分と大きな部分の差がなくなり、平坦で疲れる音になりやすいとされています。

ラウドネスノーマライゼーションが働く環境では、音圧を上げてもサービス側で音量が引き下げられるため、音圧を上げた分のダイナミクスの犠牲だけが残り、相対的な音量の得はなくなってしまう、という状況が起こり得ます。そのため近年は、無理に音圧を上げるのではなく、曲にとって心地よいダイナミクスを保つマスタリングが見直される傾向にあると言われています。

マスタリングで意識したいポイント

音圧競争から距離を置いたマスタリングを行う場合、次のような点を意識すると良いとされています。

  • 曲のジャンルやテンポに合った、適切な範囲のダイナミクスを保つ
  • リミッターは仕上げの微調整として使い、極端な圧縮に頼りすぎない
  • 各配信サービスが公開しているラウドネスの目安値を参考にする
  • ピークレベルだけでなく、LUFSメーターを併用して音量感を確認する

配信サービスごとに推奨されるラウドネス値には違いがあるとされていますが、具体的な数値は各サービスの公式情報が随時更新される可能性があるため、マスタリングの際は各サービスが公開している最新の情報を確認することをおすすめします。

自宅環境でのラウドネス確認方法

多くのDAWには、標準またはプラグインとしてLUFSを計測できるラウドネスメーターが用意されています。マスタリングの最終段階で、曲全体を通して再生しながらラウドネスメーターの数値を確認し、極端に高すぎたり低すぎたりしないかをチェックする作業が有効です。

また、複数の曲を聴き比べる際は、単純な音量だけでなく、体感的な音圧感やダイナミクスの豊かさも合わせて評価すると、ラウドネスノーマライゼーションが働く環境でどう聴こえるかをより正確にイメージできます。可能であれば、実際にストリーミングサービスにアップロードしたあとの音を確認し、意図した音量感になっているかを検証するとよいでしょう。

ジャンルによる音圧の考え方の違い

ラウドネスノーマライゼーションが広まった現在でも、ジャンルによって好まれる音圧感には違いがあります。EDMやヒップホップ系のジャンルでは、比較的音圧の高いマスタリングが好まれる傾向がある一方、アコースティックやジャズ、クラシック寄りの楽曲では、ダイナミクスを活かした余白のあるマスタリングが好まれる傾向があるとされています。

自分が作る曲のジャンルにおいて、どの程度のダイナミクスや音圧感が一般的に好まれているかを、同ジャンルの楽曲を聴き比べながら把握しておくと、マスタリングの方向性を決めやすくなります。

ミックス段階からラウドネスを意識する

ラウドネスの調整は、マスタリングの最終段階だけで行うものと思われがちですが、実際にはミックスの段階から意識しておくと、後の作業がスムーズになります。各トラックの音量バランスやダイナミクスがミックスの時点で適切に整理されていれば、マスタリングで無理にリミッターを強くかけて音量を稼ぐ必要が少なくなります。

逆に、ミックスの時点で各楽器の音量差が大きすぎたり、特定の帯域だけが飽和していたりすると、マスタリングで帳尻を合わせようとした結果、不自然な音圧のかけ方になりがちです。ラウドネスノーマライゼーションを前提にするなら、マスタリングだけで解決しようとせず、ミックスの精度を高めることが結果的に近道になるという考え方は、広く共有されているようです。

サービスによって基準が異なる可能性

ラウドネスノーマライゼーションの具体的な適用方法や目標値は、サービスごとに異なる可能性があります。あるサービスでは強めに音量を揃える処理がされる一方、別のサービスではそこまで厳密に揃えない、といった違いがあり得るとされています。また、こうした基準は各サービスの運営方針によって将来的に変更される可能性もあります。

一つの環境だけを基準にマスタリングを最適化すると、別の環境で聴いたときに意図と異なる音量感になることもあります。可能であれば、複数の環境で試聴し、極端に音量が変わってしまわないかを確認しておくと安心です。断定的な数値をこの記事で示すことは避けますが、マスタリングを行う際は、各配信サービスが公式に案内している最新のラウドネス関連の情報を確認する習慣を持つことをおすすめします。

リファレンス曲との比較の仕方

自分の曲のラウドネスが適切かどうかを判断する一つの方法として、同じジャンルで既に配信されている曲をリファレンス(参考)として、ラウドネスメーターで数値を比較する方法があります。同じジャンルの曲であっても、マスタリングの方針によってLUFS値には幅があることが一般的です。

リファレンス曲を数曲選び、それぞれのLUFS値やダイナミクスの傾向を確認しておくと、自分の曲がそのジャンルの中でどのあたりに位置するかを客観的に把握しやすくなります。数値だけを真似るのではなく、リファレンス曲がなぜその音圧感を選んでいるのか、曲調やアレンジとの関係も含めて聴き比べる姿勢が、マスタリングの判断力を養ううえで役立ちます。

まとめ

ラウドネスノーマライゼーションの普及により、単純に音圧を上げるだけでは以前ほどの効果が得られにくくなっていると考えられています。ダイナミクスを保ちながら、ジャンルに合った音圧感を意識するマスタリングが、これからの時代にはより重要になってくるでしょう。

マスタリングの仕上がりは、実際に多くの人に聴いてもらって初めてその効果を実感できるものです。マイグル2のような楽曲制作者向けのサービスで公開し、リスナーからの反応をもとに自分なりのマスタリングの基準を育てていくのも一つの方法です。