EPKとは何か

EPKは「Electronic Press Kit」の略で、もともとは音楽業界でアーティストの情報をまとめて関係者に渡すための資料を指します。紙のプレスキットが電子化されたもの、という理解でおおむね間違いありません。ライブハウスのブッキング担当者、音楽フェスの主催者、レーベルの担当者、コンペの審査担当者など、短時間で「このアーティストがどういう人物・グループなのか」を把握したい相手に向けて作られます。

バンドやボカロP、歌い手として活動していると、SNSのプロフィール欄だけでは伝えきれない情報を求められる場面に出会います。たとえば対バンライブのブッキングでは、過去の出演実績や動員数の目安を聞かれることがありますし、コンペやオーディションでは経歴や代表曲のリンクをまとめて提出するよう求められることがあります。そのたびに情報をかき集めて送るのではなく、あらかじめ1枚(1ページ)にまとめておくことで、依頼や問い合わせへの対応がスムーズになります。

EPKは必ずしも専用のツールで作る必要はありません。PDFファイル1枚でも、ホームページの中の1ページでも構いません。大切なのは、相手が知りたい情報に短時間でたどり着ける構成になっているかどうかです。

EPKに載せるべき要素

EPKに盛り込む内容は活動形態によって多少変わりますが、共通して押さえておきたい要素は次のとおりです。

要素 内容
アーティスト名・バンド名 表記の揺れがないよう、正式名称を統一しておく
プロフィール写真・イメージ画像 印刷やスクリーン表示に耐える解像度のもの
経歴・プロフィール文 活動歴、これまでの実績を簡潔にまとめたもの
代表曲・音源へのリンク ストリーミングやYouTubeなど、すぐ聴ける場所へのリンク
ライブ映像・パフォーマンス動画 演奏力や表現力が伝わる映像
これまでの出演歴・実績 出演したライブハウスやイベント、動員数の目安など
メンバー構成・楽器編成 バンドの場合は各メンバーの担当楽器と簡単な紹介
連絡先 問い合わせを受け付けるメールアドレスやフォーム
SNS・公式サイトへのリンク 日頃の活動を確認できる場所

すべての項目を無理に埋める必要はありません。実績がまだ少ない段階では、経歴や実績を厚く書こうとするよりも、代表曲や映像でその場で判断してもらえるようにする方が、相手にとって親切です。

プロフィール写真と画像の扱い

EPKに使う写真は、SNS用に撮ったカジュアルな写真とは別に、きちんとした照明のもとで撮影したものを用意しておくと安心です。ライブハウスの主催者やフェスの運営が、フライヤーやウェブサイトの出演者一覧に写真を使いたいと考えることがあり、その際に解像度の低い画像しかないと、掲載を断られたり、粗い画質のまま使われてしまったりすることがあります。

具体的には、印刷にも耐えるよう、長辺2000ピクセル程度以上の画像を用意しておくと汎用性が高くなります。また、正方形・横長・縦長など、複数のアスペクト比のバージョンを用意しておくと、掲載先のレイアウトに合わせやすくなります。

バンドの場合は、メンバー全員が写った集合写真に加えて、各メンバーの個別カットもあると、雑誌やウェブメディアの取材を受けた際に重宝します。

プロフィール文の書き方

EPKのプロフィール文は、ホームページに載せる詳しいプロフィールとは役割が異なります。ここでは「誰が読んでも短時間で活動の輪郭がつかめること」を優先し、次のような要素を簡潔にまとめます。

  1. 結成年・活動開始年
  2. 活動拠点(地域)
  3. 音楽性を一言で表す言葉(ジャンル名や、影響を受けたアーティストの名前など)
  4. これまでの主な実績(出演イベント、リリース作品、再生数や動員数の目安など)
  5. 現在の活動状況(新曲を準備中、ライブ活動を中心にしているなど)

文字数の目安としては、200字から400字程度に収めるのが扱いやすいでしょう。長い経歴がある場合でも、EPKでは要点だけを抜き出し、詳細を知りたい相手にはホームページやSNSへのリンクで補う、という役割分担を意識すると読みやすくなります。

音源・映像リンクの選び方

EPKで最も重視されるのは、実際の音や映像です。文章でどれだけ魅力を語っても、聴いてもらえなければ判断のしようがありません。代表曲は1曲だけでなく、路線の異なる2〜3曲を用意しておくと、幅の広さが伝わりやすくなります。

ライブ映像を載せる場合は、観客の前で演奏している映像があると説得力が増します。宅録やスタジオでの練習映像だけでは、本番でのパフォーマンス力が伝わりにくいためです。とはいえ、まだライブ経験が少ない段階では、練習スタジオでの演奏映像や、弾き語りの映像でも十分に役立ちます。「今の実力で出せる最良のもの」を選ぶという考え方で問題ありません。

リンクを貼る際は、再生数や登録者数が少ないことを気にしすぎる必要はありません。ブッキング担当者やコンペの審査担当者は、数字そのものよりも、演奏やパフォーマンスの中身を見て判断することがほとんどです。

出演歴・実績のまとめ方

実績はただ羅列するのではなく、相手にとって意味のある情報を選んで載せることが大切です。たとえば、地元の小さなライブハウスでの単独公演よりも、大型フェスのオーディション通過や、有名アーティストとの対バンの方が、初対面の相手には伝わりやすい実績になります。

実績が少ない段階では、無理に誇張せず、これまでの出演歴を年表形式で簡潔に示すだけでも十分です。

年月 実績
2024年3月 ○○ライブハウスにて初ライブ
2024年8月 ○○フェス地方予選出場
2025年5月 1stシングル配信リリース
2025年12月 ○○イベントにゲスト出演

このように時系列で並べると、活動が継続していることが伝わり、実績の数以上に「地道に活動を続けている」という印象を与えることができます。

フォーマットと配布方法

EPKの形式としては、PDFファイル、ホームページ内の専用ページ、Googleスライドの共有リンクなど、いくつかの選択肢があります。それぞれに向き不向きがあります。

  • PDFファイル: メールに添付しやすく、印刷して資料として配布したい相手にも対応できる
  • ホームページの専用ページ: リンク1本で常に最新の内容を届けられる。更新の手間が少ない
  • スライド形式の共有リンク: ビジュアル重視で見せたい場合に扱いやすいが、相手の環境によって表示が崩れることがある

迷った場合は、ホームページに専用ページを作っておき、必要に応じてPDFとしても書き出せるようにしておくと、どちらの用途にも対応しやすくなります。

更新を怠らないこと

EPKで最も避けたいのは、情報が古いまま放置されることです。解散したメンバーがそのまま載っていたり、リンク切れになった音源が案内されていたりすると、せっかく興味を持ってくれた相手に不親切な印象を与えてしまいます。

新曲をリリースしたとき、ライブの実績が増えたとき、メンバー編成が変わったときなど、節目のタイミングで見直す習慣をつけておくと、いざ問い合わせが来たときにも安心して案内できます。

マイグルのようなホームページサービスでプロフィールページを作っておくと、そのページ自体をEPKの代わりとして案内できる場合もあります。日頃から情報を整えておく場所を1つ持っておくと、いざというときの対応が楽になります。